DACO連載 大地のめぐみ
ナンプラー
「ていねいにダシを取り……」と言うフレーズに弱い。私も歳を取ったら料理が身についた女性としてさ!こうありたいと思ってきた。だが、現実はいっこうにそうはなる気配はなく、時間ギリギリに台所に駆け込み、昆布を水に投げこむ日々が続いている。
日本の食は醤油にしても味噌にしても 野菜にしても魚にしても、そこからかジワリと出てくるダシを味わおうとする国民だと思う。やさしく調和のとれたダシというのは実に旨い滋養溢れる風味だ。でもついつい もうちょっと濃くしたら もっと美味しいかと欲を出し あくどくなってしまうこともよくある。
たとえば麺つゆだが、蕎麦や小麦の粉自体の風味が好きな私には 市販の麺つゆはどうも違和感がある。 とはいっても、自分で作る余裕がないわけで……苦渋の選択として わが家では とびきり上等の本醸造醬油を水で割って麺つゆにしてきた。本醸造の醬油には160種類の薫りがあると言われるだけあって 後口感がサッパリしていて醤油単独の素朴で力強い風味がすばらしい。本醸造の醤油はさすがである。
ところがタイに住むようになって別バージョンの麺つゆを作るようになった。醬油にナンプラーを組み合わせるのだ。タイに染まってしまった人の妄想と思うかもしれないが、大丈夫!私の舌は健在である。ナンプラーにも醤油と同じようにいろいろあるのだ。。。2年熟成したナンプラーはまさに別格で 特有の「臭い」も「匂い」に変わっている。だから醤油と合わせると意外なほどおさまりがよく、魚の旨みがほんのりプラスされるのである。
ナンプラープラス醬油を、水で割ったら麺つゆ、お湯で割れば天つゆになる。即座で旨いつゆができるのだからタイ料理だけではもったいない。
本醸造のナンプラーとはタイの海でとれた丸ごとのカタクチイワシを3倍の塩で2年漬けたものだ。魚の内臓や身の中の存在してた酵素が 魚自体の動物性タンパク質を充分に分解し、旨味のもとのグルタミン酸やアミノ酸を作り出すのだから濃厚ダシの素でもあるわけである。
私の好物であるズッキーニの柳川はナンプラーを入れて作る。するとズッキーニの青臭さがふんわりと消え、もうほっぺたが押しそうな、ドジョウを探してしまうほどの一品になるのである。
ズッキーニの柳川風 2〜3人分
材料
- ズッキーニ 7センチに筒切りしてからまわし切り 小型1本
- ごぼう ささがき 1/2本
- 玉ねぎ 薄いまわし切り 1/4こ
- 油揚げ 細切り 1/2枚
- 昆布 2センチ
- きのこ 1ふさ
- ねぎ 小口切り 15センチ
- 水 1と1/4c
- 醤油 スープスプーン1と1/2
- ナンプラー スープスプーン1/2
- 味醂か酒 スープスプーン2
作り方
- 鍋に昆布ときのこを入れる。
- 玉ねぎ→ごぼう→油揚げ→ズッキーニの順に重ね水を入れる。
- ナンプラー、醤油、味醂をいれ 中火から弱火にして煮る。
- 味が染み込むまで煮たら、皿にそのまま盛る。
- ネギをかける。山椒があればふってください。
有精卵の卵でとじてもよい