DACO連載 大地のめぐみ
ジャックフルーツの種
同じ年代とは不思議なものだ。全く違う環境で育ったのはずなの…タイ人と日本人なのだよ…子供の頃の話には理解できるものがある。特に食物のことになると両者一層のこと力がこもる。同世代のタイ人のうちに遊びにいくと、必ず何かしら「知っている?これさぁ〜」と昔話につながる昨今では手に入りにくい果物や菓子が登場する。今回私を待っていたのは、旬をむかえた「ジャックフルーツとその種」だった。
日本でも種は食べた。かぼちゃの種はなかなか根性がいるが干して煎った。スイカの種は食べたことなかったがタイではこの小さなスイカの種も手間暇かけて食べる。種は作物が成長していく成分が詰っている生命カプセルのようなものだから、栄養満点な食材であることは間違いなく、昔の人は捨なかった。
しかし、なんという大きな種! ジャックフルーツ自体がとてつもなく大きいのだから種も大きいのは当たり前だが、それにしても大きい。同世代はおやつとして蒸して食べたそうで、タンパク質が豊富だという。卵とマングビーンズでできた甘いメットカヌゥンというお菓子に形が似ているのだそうだ。この菓子の名前がまさしくジャックフルーツの種という名なのだから笑えるが、子供の頃、メットカヌゥンだと喜んで食べるとジャックフルーツの種だったぁ〜ということがよくあったそうだ。
種を食べるには、まずゴツゴツした皮のジャックフルーツをかっさばく。不思議な経験だった。よく熟れたジャックフルーツを切った途端、ゴム状の恐ろしく弾力のある白い粘液がどこからともなく滲み出てきたのだ。気がつけば包丁もまな板もベタベタ、手もベタベタ。水で洗おうものなら益々ベタベタで途方にくれた。実は油で拭くとワケなく落ちると後から知った。
取り出した種は塩を振りしっかり蒸す。するとまるでじゃが芋のような食感になり、冷めるとそら豆みたいな香りがしてくる。タイにはそら豆はないので久しぶりの味に大感激だった。果肉もおいしいが、種もなかなかである。
どこで手に入るかしらとたずねると「都会では無理ですわな〜」という返事だった。そういえばスーパーで種だけ売っているのは見かけたことがない。だが、ジャックフルーツを剥いて売っている屋台のおじさんのところには種もあるはずだ。もしタイを訪れることがあったら、ジャックフルーツを売っている屋台をしげしげ観察してほしい。たいがいビニール袋の中に種は集められているし、運が良ければ蒸したものを売っている。
種を頬張りながらタイ友は嘆く。「このごろのフルーツは種無しが流行りで、昔ほど種が入ってないんだな〜」。そう、本当だ。果物は種も皮も丸ごと利用できるものだということを忘れていた。
ジャックフルーツの種の塩蒸
材料
- ジャックフルーツの種
- 種の重さの1%の塩
作り方
- 種に塩をよく絡める
- 蒸し器で20分蒸す
茹でるより蒸した方がアクが落ちでまろやかです。